序 〜1984〜
生暖かい夕暮れ
雨上がり
薄暗い部屋
時計の音
ベッドの上
壁に凭れ、膝を抱え
彼は考える
「記憶というものはヤッカイなものだ」
昨日の午後
程良い陽射し
何か大事なものを壊してしまったような
その破片に埋もれて今にも窒息しそうな
悔恨の念にツメを確かめる
でも
まだ大丈夫だろう
時々
夜
通り過ぎる排気音に
彼は鼓膜が邪魔になる
「記憶というものはヤッカイなものだ」
バラの花を見るたびに
彼は思うんだ
Copyright(c) 1998 T.K'S WEB SERVER. All Rights Reserved.