序 〜1984〜


生暖かい夕暮れ
雨上がり
薄暗い部屋
時計の音
ベッドの上
壁に凭れ、膝を抱え
彼は考える

「記憶というものはヤッカイなものだ」

昨日の午後
程良い陽射し

何か大事なものを壊してしまったような
その破片に埋もれて今にも窒息しそうな

悔恨の念にツメを確かめる

でも
まだ大丈夫だろう

時々

通り過ぎる排気音に
彼は鼓膜が邪魔になる

「記憶というものはヤッカイなものだ」

バラの花を見るたびに
彼は思うんだ


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